小学生の算数が苦手になるのは、なぜでしょうか。
計算が遅いから。
数字に弱いから。
文章問題が苦手だから。
いろいろな理由が挙がると思います。
僕は塾講師として小学生・中学生を見てきて、そして自分自身も小学生の子どもを育てる中で、最近よく思うことがあります。
子どもが学校で「理解できること」って、実はその前から、なんとなく知っていることが多いのではないか。
ということです。反対に学ぶ内容が全然知らないことだと、頭になかなか入らない、集中が持たない、なんてことが。
「知っている」と「初めて聞く」では違う。
例えば、学校で分数を習うとします。
「1を3つに分けたうちの1つを3分の1といいます」
と教えてもらったとき、すんなり理解できる子もいれば、なかなかイメージできない子もいます。
この違いの一つには、これまでの経験があるのではないでしょうか。
ケーキやピザの切り分け。
お小遣いを3兄弟で分ける。
1個より少ないけれど、0ではないものがあることを知っている。
そういった経験がある子にとっては、学校で「分数」という言葉が出てきたとき、
「これ、知ってる」
となりやすい。
もちろん、学校の授業で初めて知ったことでも、そこから理解することはできます。
でも、
まったく知らないことを初めて聞くのと、なんとなく知っていることに新しい名前がつくのとでは、どちらが理解しやすいか。
これは言うまでもないと思います。
算数に限った話ではありません。
社会でも理科でも、これまでに見たり聞いたりしたことがあること、少しでも背景知識があることは、学校の授業を理解するうえで助けになります。
だから僕は、子どもが学校で勉強する前に、いろいろなことについて「なんとなく知っている」という状態を作っておくことが大切だと思っています。
じゃあ、予習をたくさんすればいい?
ここで、
「じゃあ学校で習う前に、予習させないといけないんですね」
となるかもしれません。
でも、僕はそれをおすすめしたいわけではありません。
未就学や低学年の頃から毎日机に向かって、学校で習うことを先取りして……。(塾はその一端を担いますが)
勉強が好きな子ならいいと思います。
でも、なかなか全ての子にできることではありません。
そもそも、勉強がまだそれほど好きではない子に、または勉強という概念がない幼い子に
「学校で習う前に勉強しておこう」
と毎日続けるのも、なかなか大変です。
そこで鍵を握るのが、日常生活でのちょっとした会話ややり取りだと思っています。
算数は、そこらじゅうにある
小学校の算数で習うことは、日常生活の中にたくさん出てきます。
例えば分数。
ピザやサンドイッチを切り分けて食べるときに、
「お兄ちゃんは8分の3も食べたんだね!」
なんて話をするだけでもいい。
割合なら、
「ご飯おかわり~」「さっきのが10なら、どれくらいにする?」
といった会話もできます。
料理なら、量を考えることがあります。
2人分のレシピを4人分にしたらどうなるか。
200mLのジュースを半分に分けたらどれくらいか。
買い物に行けば、値段やおつり、何個買えるかを考えることがあります。
時計を見れば、
「あと何分?」
「今から30分後は何時?」
という話ができます。
車や電車に乗れば、距離や時間、速さの話もできます。
部屋を見渡せば、長さや面積、図形があります。
こうして考えてみると、小学校で習う算数は、特別な教材を用意しなくても、日常生活のいたるところにあります。
算数の問題を探そうと思えば、いくらでも見つかります。
大切なのは、大人が少しだけ「これって算数だな」と意識しておくことなのかもしれません。

「勉強」ではなく、さりげなく話す
ただし、ここで一つ大切なことがあります。
こういう話をすると、
「じゃあ今日から子どもに算数を教えよう!」
となってしまいそうですが、僕はそれも少し違うと思っています。
子どもと話すときに、
「これは算数の勉強だからね」
なんて言う必要はありません。
むしろ、言わないほうがいいかもしれません。
ピザを切るときに
「ぐるっと一周360度、4等分にすると~」なんて言ってみたり。
ガチャガチャを見ながら、
「このガチャガチャ2回するなら、100円玉たりるかな?」
と話す。
カレーを食べながら、
「おかわりはさっきの4割くらいで」
なんて話す。
そのくらいでいいと思っています。
勉強ではなく、ただ楽しく話す。興味がなさそうなときは特にそのあとは引っぱらない。
ふだんのやり取りに、少し算数が混ざっている。それで十分だと思います。
「知っている」が「好き」につながる
僕は、小学校から中学校、高校へと進むにつれて、算数・数学が苦手になる学生の割合が増えていくのには、こうしたことも関係しているのではないかと思っています。
小学校の算数には、日常生活の中で触れることのできる内容がたくさんあります。
ところが中学校、高校と進むにつれて、日常生活の中だけではなかなか触れない内容も増えていきます。
中学数学や高校数学にも、現実の世界とつながっている部分はたくさんあります。
ただ、学校で学ぶ内容を、毎日の生活の中で自然に経験できる機会は、少しずつ減っていくように感じます。
だからこそ、その前に、
「算数って面白い」
「数学分かる」
という感覚を持っておいてほしい。
そして、そのためには、
「知っている」ことが大きな助けになる。
僕はそんなふうに考えています。
小学校の算数は、家庭の日常から
小学生の算数が苦手にならないようにするために、特別なことを毎日やる必要はないと思います。
毎日長時間勉強させる必要もないのはありませんか。
先取り学習をしなければならないわけでもありません。
ただ、日常生活の中にある「算数」に、少しだけ気づいてみる。
そして、それを子どもと楽しく話してみる。
それだけでも、子どもの中には少しずつ「知っていること」が増えていきます。
学校で新しい単元を習ったとき、
「それ、前にやったことある!」
「これ、知ってる!」
となれば、それだけで授業への入り方は変わってくるはずです。
そして、
分かるから、ちょっと面白い。
面白いから、もう少しやってみる。
そんな経験が積み重なっていけば、算数を好きになるきっかけにもなるのではないでしょうか。
小学生の算数は、机の上だけにあるものではありません。
今日の食卓にも、買い物にも、料理にも、時計にも、遊びにもあります。
まずは大人が少しだけ意識してみる。
そして子どもと、楽しく話してみる。
それくらいのところから始めてみてもいいのではないでしょうか。
〖投稿者〗桂カレッジ 志水
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